「風のささやき」
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四国88か寺めぐり「歩き遍路」 -第3回目- |
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文 : 郷原 秀昭さん イラスト:はまだひろこさん |
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シリーズ郷原さんの四国88か寺巡り「歩き遍路」は今回第3回目。 今週の読みどころ→思いがけず、出会った若者と84番寺まで一緒に歩くことに・・ 3月23日(土)晴時々曇り 【行程】79番高照院、80番国分寺、81番白峰寺、82番根香寺 44,128歩
朝風呂浴び朝酒は我慢し、7時過ぎ宿を出て歩くこと1時間余で79番に到着。 打ち終え、納経所に行くと団体さんが16冊と4本の掛け軸を差し出していた。隣に 30冊近く納経帳が積んでありゾ−ッとしたが売り物だと分り胸を撫で下ろした。 81番白峰寺へは8k近くの道程で途中「へんろころがし」と呼ばれる厳しい登 り坂があったが昨年の焼山寺に比べたらさほどでもなかった。 却って冷たい風が心地よく大して汗もかかなかった。 坂の途中「時と金かけて歩くは遍路道、この痛みこの疲れこそ有難き哉」と書いた 標柱を見た。 うまいこと詠みよるな−と感心したが悲しいかな有難い境地には達っ せなかった。 ず−と山中行程で食堂はおろか自販機もなく閉口したがペットボトルの水で何とか 凌いだ。 82番納経所で老住職に話し掛けようとしたが遠慮した。左正面にTV,耳には イヤホ−ンを付けて筆を走らせ、時々前のTVに眼をやって五感のフル回転である。 聖徳太子も顔負けのマルチ並行処理である。黙礼し無言のまま今夜の宿へと踵を返 した。 今夜は温泉ではなく民宿の沸かし風呂、疲れもピークで中々とれない。 足先から ふくらはぎ、膝、腿と全般に疲労が溜まっており次第に筋肉痛が出てきた。はき慣れ たスーニカ−でも連日の長時間酷使で摩擦のため足の指が腫れて痛い。5本指靴下の神通力もそろそろ薄れてきたようだ。 両足の親指、小指にテ−ピングして明日に備えた。 3月24日(日)曇り時々晴 【行程】83番一宮寺、84番屋島寺 39,834歩
7時宿を出て8Kの行程で一宮寺へ向かった。 15分近く歩いた時列車とすれ違 いその行く先を何気なく見てびっくり。 睡眠不足のせいか左右間違え逆方向に歩い ていたことが分り即Uタ−ンした。早朝は人影がなく道を尋ねる機会がないので要 注意である。 83番一宮寺打ち終えコンパスで慎重に次への道を確認していたら顎鬚を蓄えた 若者に声を掛けられた。 「84番屋島寺へ行かれるのでしたらご一緒しませんか?」 一瞬驚いたが即OKした。 貴方とは年が随分違うので歩くペ−スが合わない場合は 遠慮なく先へ進んで下さいと断っておいた。 まさに同行二人で屋島寺まで16K、 3時間半余り一緒に歩いた。 彼は愛知県の某大学2回生で歩き初めて丁度30日、明日結願の予定だと言う。随分 早いと思って確認したら車の接待を結構受けてきたそうで成る程と納得。
彼は道中3度も小用足したので、腹の中で『小 便小僧』(失礼)と愛称をつけた。 屋島寺打ち終え、小便小僧とは分れて琴電で高松市内へ戻り旧友K氏に会いに行 った。 卒業以来初めてで彼は顔みても分らないのではと心配していたので、帽子・ 服装を伝えた。 私から自信を持って声掛け再会を喜び合い、暫し学生時代に戻り旧交を暖めあった。 39年振りでお互い健康で杯を酌み交わせる幸せをしみじみと噛み締めた。 屋島の駅前旅館に投宿したが食堂は地域の交流酒場となっていた。亭主夫婦を 中心に多彩な飲客の 輪に加わって酒と話が弾んだ。 一期一会、今日一日多くの人と出会い、触れ合ったがこれぞ 遍路旅の真髄で愉しかった。 ===続く====
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