四国88か寺 自転車めぐり  
第二章 10/5-10/7


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2001年11月13日
--10月5日(木)晴 7:10旅館出発 16:50旅館かどや着 走行68KM 歩き8K---

  十一番藤井寺から十二番焼山寺(H700)への難路にはすっかりくたびれた。梨の木坂登り道4K程は喘ぎあえぎMTBを押して歩いた。2KM過ぎると疲労が募り300M登る毎に小休止で汗を拭い、600M毎に一口水を飲んだ。途中柿(8個\100)を買い求め、奥さんに断って洗って食べようと蛇口をひねると水がでない。すると旦那がスイッチ切ってあるから水はでないとのたまった。仕方なく諦めて傍のお姉さんに「後登りは何キロ位ですか」と尋ねると地の者ではないのでわからないとご丁重な返事であった。ここは親切な気持ちが「無しの気坂」である。柿の袋を投げつけたい衝動に駆られたが我慢、これも修行修行と必死になって垂れ気味の腹を横にした。
  さらに歩を進めていると一種の幻覚症状が表われ、上りが下りに見え、輪子のペダルを踏むと重たくて進まなかった。また後方から車の音が聞こえ端に寄ってやり過ごそうとしたこともあった。 極度の疲れは視覚や聴覚が異常になるのかも知れない。初体験に驚き暫し立ち止まり頬や脚を叩いた。
 5K余りのダウンヒルは僅か10分足らずで一気に降り少し勿体ない気がした。まさに"苦あれば楽あり"を実感したが苦と楽の時間差があまりにも大きく"長苦あれば短楽あり"と思えた。 麓の鍋岩で輪子と暫しの別れで、4K程歩いて登りようやく焼山寺に辿り着いた。
  歩き遍路の方々は私より更に数倍の難行苦行であろう。さすがに遍路ころがしと言われ88ケ所随一の難所で遍路者を鍛えてくれており、ここを乗り越えれば後は自信に繋がるのだろうと類推した。 ついで十三番大日寺への道のりは26Kと長く且つアップダウンが多くて疲れはピ−クに達しグロッキ−となった。途中三度道端に座り込んで脛、膝、腿を揉み消炎クリ−ムをすり込み我身を叱咤激励した。 十三番打ち終え、遍路向け旅館の看板から今夜の宿確保した。

----10月6日(土)晴 7:00旅館出発 17:10F氏邸着 走行76KM 歩き8K-----

 宿を出て十四番常楽寺へ向かったが道を間違えて6K、30分余りのロスで出鼻を挫かれた。
 車で久留米からきている老夫婦と十四番から十七番井戸寺まで前後して境内で会っては別れた。
 二十番鶴林寺への道で又もやミスを犯した。登り坂で手前4Kから輪子と別れて歩いて登った。
  納経所で尋ねたてわかったのだが手前2K地点まで輪子を押し上げて二十一番太龍寺への道が続いているそうでガックリした。MTBまで戻ってまたガックリ、ドロボ−に見舞われていた。昼食用に仕入れたのパンが無く、包装袋が散乱していた。さらにMTBのベルが無くなっていたのである。みかんには手を付けてなかったので猿等の仕業とは思えず人間に違いない。二十一番へ行く気力が殺がれて3時前でまだ早いが今日はこれまでと決めた。
  今夜は旧知のF氏夫妻にお世話になるので早めに伺い旧交を暖めることにした。電話を入れてナビして貰ったが2時間近くもかかった。距離的には10K程度で1時間以内に着けると思ったがさにあらず。タップリと25K走り17時過ぎに漸く到着した。ご夫妻に歓迎され37年振りの再開を喜び合った。
  手作りの料理(好物の魚尽くし)とビール、ワインに舌鼓を打ち楽しい会話が弾んだ。
  夜が更けるまで積もる話を交わして22時頃就寝した。 その間洗濯機借りて肌着からブルゾン、Gパンまで総洗いしたので明日は10時出発予定とした。

---- 10月7日(日)晴 8:10F氏邸出発 15:00民宿はるる着 走行86KM -----

 6時前目覚めたが昨夜のリラックスのせいか心身とも軽く疲れはないので出発を早めた。玄関で記念写真を撮りF氏邸を後にした。走り出してすぐ距離計の故障に気付き不安が募った。他力本願ではないが早めに道を訊いて走行するように心掛けた。お陰で今日は一度も間違うことなく初めて走行できた。
  二十二番平等寺、二十三番薬王寺を打ち終えて阿波「発心の道場」は一先ず終了した。(二十一番除く)
  一路R-55南下して土佐「修行の道場」に向かってペダルを踏み続けた。今夜はF氏から推奨された宍喰温泉の国民宿舎を予定していた。電話を入れると連休中のせいか満員で初めて断られた。
  宿探しで苦労しそうだと覚悟し、宍喰温泉まで走り眼についた宿から順番に飛び込もうと決めた。最初の宿「はるる」の戸を叩くと即OKで拍子抜け、だが有難かった。チェックインして即温泉に浸かり今日の疲れを癒した。身体の手入れ即ちマッサ−ジ後消炎剤を摺り込み転倒傷の消毒などいつもの対策を講じた。昨日より右手の握力が弱っており、風呂桶を落としてしまった。一日中ハンドルを握って5日目、連日長時間の酷使に耐えられなくなったのだろう。
  湯船で一緒になった高槻からの二人連れには痛くチャリ遍路に感心され褒められた。これは仕事ではなく自発的な行為で楽しんでおりそんなに褒めて頂くことではないと内心思った。 風呂上りの格別うまいビ−ルで疲れが吹っ飛んで行くのが自覚できた。ここ数日固形物の昼食は口に入らずお茶や水と柿、みかんなどとなっていた。飲みたいビ−ルは控えていた。 夜電話で母親の入院を知ったが緊急事態ではないので旅は続けることにした。 →次回へ続く
記:郷原 秀昭さん イラスト:はまだひろこさん
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