さあ、絵を描こう
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2001年10月9日
 
 関空からスキポール空港へ。そして乗り換え。大きな電光掲示板にはdelayの文字が並ぶ.黒山の人だかり。おのおの自分の飛行機の状況を見ているのだ。予定時刻が迫ってくるととても不安になる。私の行くプラハは時刻を過ぎても掲示が出ない。係員に尋ねるにもどの列も長い行列だ。行列に割り込んでも日本と違って簡単なことでも決して取り合ってはくれない。やきもきしていると表示が出た。……読めない。意味がわからないのだ.近くの旅行者に片っ端から尋ねてもわからない。やっと通りかかったスチュワーデスに聞くと、ドイツ語だという.遅れているの意。なんで英語で表示しているボードにドイツ語で表示するのだ。まあ、とにかく遅れていることが確認できれば後は待つのみ.
 このようにしてこの度はプラハに着いた.
 プラハ警察の道を隔てたところにホステルがある。元秘密警察の建物である.部屋に行くには二ヶ所の頑丈な鉄格子をくぐる。暗い灯りで狭くかぎ型に曲がった地下の廊下を通る.部屋は半地下でただ一つの明かり窓は天井に近い。太いさびた鉄格子がはめられ、外は警察の中庭である.分厚い頑丈な扉には鉄板、鋲を無数に打ちつけている。ドアの上部にはのぞき穴,下方には食事を差し入れたと思われる穴がある.今ではここも板で目隠しをしているが、当時をしのばせるには充分である.部屋の中は、鉄製2段ベッドと小さな手洗いがついているだけである。安宿を探している内にここにたどり着いた. 
 こんな不安な旅をしながら一人でスケッチに出かけている私なのです。とてもまともではない。しかし、ひとたびヨーロッパに立つと限りなく力が湧いてくる.さあ絵を描こうと気持ちが高ぶってくる.未知な国、未知な街,未知な人々。どこもかしこも、次から次へと目が移り、目が止まるところすべて興味が尽きない.  個展はスケッチをしながらヨーロッパを旅した心の記録です.いやなことの多い時代,絵を見て少しでも心が癒されれば、楽しい気持ちになることができれば、と、そんな絵を私は描きたい.美しい色と音楽で。

 

 上野乃武彌さん
url : http://www.nobuya-jp.com

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