「風のささやき」

縁台的住宅

2002年6月4日
「芦屋17℃倶楽部」理事長
小玉 文吾さん

  昔、庭先に「縁台」があった。板張りで畳一枚分の台だが、庶民が永年の知恵と経験で作った"癒しの道具"で、家族だけでなく近所の人たちも来て腰をおろした。世代に関係なく人が集まり、何気ない会話の周りで子どもたちは遊んでいた。
  
地域の青年団のお兄ちゃん・お姉ちゃんたちも顔を出した。縁台に坐る彼らは、子どもたちの憧れの人であり、恐い存在でもあった。何か良からぬことをすれば、縁台の片隅で容赦なく叱られたものである。縁台は子どもたちにとって、社会的な常識とルールを教えてくれる場であり家族と地域を結ぶ絆であった。しかしその縁台が日本経済の発展と共に消えて行き、地域の柱ともなっていた、あのお兄イお姉エまでが縁台と共に地域から消えてしまったのである。
昔、縁台があった頃、家族に絆があった。人は助け合わなければ生きて行けなかったのだ。一つの食べ物を分けて食べ、親は自分の食を子に譲った。寒い時には身体を寄せ合って暖を取り、ちゃぶ台が勉強机だった。

 
あれから五十余年。物の豊かな社会を作った私たちの世代は、同時にストレス列島と言われるまでの"病める社会"を作ってしまったのである。
  今、世間では"病める社会"の原因にようやく気づき始め、その反省から提案されているのがコレクティブハウジングやグループハウスである。共同空間を多く取った集合住宅で仲間同士が支え合うシステムで、お互いの個性を尊重し体温を感じる"ゆるやかな絆"のある住まいの提案である。いわば昔の縁台的住宅?である。
  現代は子どものケイタイに象徴されるように人々は孤独で淋しく「ジコ虫」の時代である。コレクティブハウジングやグループハウスは心の縁台をつくるもの。その縁台、即ち"現代の夢の縁台"を住民と共につくろうと遠大!な計画を考えている。

※小玉 文吾さんプロフィール

通称ダマさん。
元朝日新聞研修所幹事
シニアライフアドバイザー、余暇生活開発士
退職後、
「今が生旬(せいしゅん)だ!」と、『ダマさんの生旬塾』を
主催されたり、コレクティブハウジングの建 設に携われたりと、
シニアライフを楽しくする活動に走り回っておられます。


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