2002年09月03日「風のささやき」
|
生きる力 |
||||
夏休みも終わりに近づき、あれほど煩かった蝉の声も心なしか静かになって、代わりに秋の虫の音が夜更けのリビングに聞こえてくる頃になりました。 虫達が我々の目に触れる場所で活動するのは、主に夏を盛りに人が半袖で生活できる時期ですが、もちろん寒い季節も虫の存在自体が消滅してしまうわけでは無く、卵や幼虫、さなぎ、あるいは成虫のままどこか人間の目にふれないところで生きています。
なぜ、このようにこのナガサキアゲハは分布域を北に拡大することに成功したのか。私のような素人はすぐ地球温暖化とか工業、商業活動の活発化による都市部の温暖化によるものと単純に考えてしまいがちですが、研究者はその蝶自体が寒冷な気候に適応できるようになった可能性(内因性と言われる)も含めて調査しました。結論はやはり日本の冬の平均気温は徐々に上昇しており、さなぎが越冬中に死なないことが理由であることが判りました。気温はともかくえさはどうか?と思われるかもしれません。幸運なことにこの蝶の幼虫の食草はどこにでもある柑橘類の葉ですから、問題とはならなかったわけです。生き物というのは本来条件さえ整えば、その数を増し繁殖地域を拡大する生命力を持っています。ナガサキアゲハはその顕著な成功例でしょう。
また、別の機会に日本の急激な変化を利用して逞しく生きる虫のお話をさせていただきたいと思います。御期待ください。 写真提供:蝶の図鑑 url: http://www.j-nature.jp/butterfly/ →投稿・ご感想はこちら |