2002年09月03日「風のささやき」

こんにちは。編集部です
今日は、掲示板に投稿いただいたケビンさんのエッセイをご紹介します。
ケビンさんと言っても、れっきとした日本人。何でも、緑豊かなところに育ったので、自然に対する知識が身に付いたそうです。

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 生きる力


ペンネーム ケビンさん

夏休みも終わりに近づき、あれほど煩かった蝉の声も心なしか静かになって、代わりに秋の虫の音が夜更けのリビングに聞こえてくる頃になりました。
  虫達が我々の目に触れる場所で活動するのは、主に夏を盛りに人が半袖で生活できる時期ですが、もちろん寒い季節も虫の存在自体が消滅してしまうわけでは無く、卵や幼虫、さなぎ、あるいは成虫のままどこか人間の目にふれないところで生きています。  

ナガサキアゲハ メス:オンラインでご覧ください
ナガサキアゲハ 雌
  ナガサキアゲハという蝶を御存知でしょうか。主に亜熱帯に分布している大型のあげはちょうの一種です。冬はさなぎで越冬します。九州以南では昔から普通に見られました。戦後四国、中国地方と次第に生息域を広げ、約15年ほど前から関西でも普通に発見されるようになりました。最近では関東にまでそのテリトリーを拡大しているようです。

 なぜ、このようにこのナガサキアゲハは分布域を北に拡大することに成功したのか。私のような素人はすぐ地球温暖化とか工業、商業活動の活発化による都市部の温暖化によるものと単純に考えてしまいがちですが、研究者はその蝶自体が寒冷な気候に適応できるようになった可能性(内因性と言われる)も含めて調査しました。結論はやはり日本の冬の平均気温は徐々に上昇しており、さなぎが越冬中に死なないことが理由であることが判りました。気温はともかくえさはどうか?と思われるかもしれません。幸運なことにこの蝶の幼虫の食草はどこにでもある柑橘類の葉ですから、問題とはならなかったわけです。生き物というのは本来条件さえ整えば、その数を増し繁殖地域を拡大する生命力を持っています。ナガサキアゲハはその顕著な成功例でしょう。

ナガサキアゲハ 雄:オンラインでご覧ください
ナガサキアゲハ 雄
 しかしながらここで一つ疑問が残ります。この蝶の進出によって衰退した蝶の種類があるのではないかと。食草から判断すると競合するのは、ナミアゲハとクロアゲハです。食草の量が一定もしくは以下ならばナガサキアゲハの進出で割を食った蝶たちが居るはずです。残念ながらこのことについて書いた文献を知りません。どなたか御存知の方、仮説をお持ちの方おられましたら教えてください。



  また、別の機会に日本の急激な変化を利用して逞しく生きる虫のお話をさせていただきたいと思います。御期待ください。


写真提供:蝶の図鑑 url: http://www.j-nature.jp/butterfly/


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